高知への想いを持って事業に取り組むことで、その先へと繋がっていく【株式会社とさごころ】
2022年1月に高知で創業((注)2021年7月に高知県へ立地した株式会社やまとごころから事業承継)した株式会社とさごころは、インバウンド(訪日外国人観光客)誘客のための高知の情報発信や海外での認知向上、また受け入れ態勢の整備に向けたサポートなどを行っています。首都圏を中心にインバウンドに関する情報発信やコンサルティングを事業の柱とする親会社の「株式会社やまとごころ」が、2017年より高知県内の事業を実施していたことから、2021年の高知県進出、2022年の「株式会社とさごころ」設立へとつながり、今では高知県のインバウンド事業に欠かせない存在となっています。
今回は、代表取締役の中澤龍さんに、高知での会社を設立することになった経緯や現在の取り組みについてお話を伺いました。
講演会をきっかけに高知との繋がりが生まれる
株式会社やまとごころとして、高知との繋がりが最初に生まれたのは2016年のことでした。高知県からの依頼で、インバウンドに関する講演のために高知を訪れたことがきっかけです。
「やまとごころは、2007年の創業以来『インバウンドツーリズムを通じて日本を元気にする』ということを掲げてサービスを提供してきました。国内外の事業者さんのコンサルティングを行う一方で、そこで蓄積したナレッジを講演会などで海外からの誘客に取り組む事業者の方々にお伝えしており、高知県もそうした依頼の一つとして講演を担当させていただきました。」
2017年、高知県の国際観光に関わる公募事業があることを知ります。それまでに、講演会を通して高知県の取り組みを事前に知っていたこともあり、「株式会社やまとごころ 地域共創部」としてプロポーザルに参加をすることを決めました。
この時、先頭に立っていたのが地域共創部の部長(当時)であった中澤さんです。
ゆかりのある高知県で、想いのこもったサービスを提供
講演会に呼ばれて訪れた高知県。実は、中澤さんにとって意外な繋がりがある場所でした。
「私は生まれも育ちも奈良県ですが、両親が高知大学の出身で、私の『龍』という名前は坂本龍馬さんからいただいています。そんな経緯もあり、高知は私にとって少なからずルーツのある場所だなと思っています。思い入れのある地だからこそ、ただ事業を行うのではなく、想いを持って取り組むことができています。」
2017年から地域共創部として高知で事業を開始し、翌年以降も徐々に仕事が増えていきます。すると、自ずと高知で事業を進めるためのノウハウが溜まっていき、高知が段々と仕事をしやすい場所になっていきます。2021年には株式会社やまとごころ高知オフィスを構え、「高知事業部」として高知で専従スタッフを採用しました。そして翌年の2022年1月、株式会社とさごころの設立へと繋がっていくことになります。
マネジメント人材の採用には時間がかかるものとして
株式会社とさごころは、東京と高知を行き来する中澤さんのほか、高知で採用した社員、パート従業員とともに運営しています。もともと高知県にお住まいだった方だけでなく、国内外からの移住者を含むバラエティ豊かなメンバーです。
目下の課題としては、マネージャー人材の確保です。一時期は大手求人サイトで募集をしたこともありましたが、県外からの応募が多かったそう。高知県内の人材を採用したいと考えていた中澤さんは、高知県内での採用に切り替えたそうです。
「県外からさまざまな経歴を持つ方からの応募がありましたが、地元のことをよく知っている高知の方を採用したいという思いがあり、マッチングには至りませんでした。株式会社とさごころという会社の未来を考えても、地元の方がマネジメントをしていくことがサスティナブルですよね。ゆくゆくは、高知のスタッフたちに会社を引き継いでいくべきと考えています。」
都市部の求人、例えば親会社である「株式会社やまとごころ」の求人は応募から採用までスムーズに進むことが多いそうですが、高知では、特にマネージャー人材の採用に至るには時間がかかるということが現実としてあるようです。
想いを持って事業に取り組むことで、信頼関係を築く
現在、株式会社とさごころの事業内容は行政や観光関連団体からの委託事業の割合が多く、そのほかは自主事業である観光商品等となっているそうです。
「高知県は、とても仕事がしやすい土地だなと思っています。他の地域では、私たちのような会社はややドライに接されることも多い中、高知ではさまざまな方々がパートナーのように見てくれているなと感じることがあります。こうした関係を築けていることで、より一層事業に力が入ります。」
高知県は、2023年にインバウンドの宿泊者数が全国2位の伸び率と[1]なりました。一方で宿泊者数は12万9千人とまだまだ伸びしろがあり、今後の可能性に期待が集まっています。
最後に、高知県への進出を検討している方へのアドバイスを求めると、以下のような答えが返ってきました。
「アドバイスをするとすれば、代表が高知のことを好きかどうかはすごく大事だということですね。例えば、私自身も客観的に見るとそこまでしなくてもいいでしょうということまでやってしまうことがあるのですが、そうしたことからうまくいったり、次に繋がったりすることがあります。どこまで想いを持って高知の仕事に向き合えるか、というところが事業の成功に大きく影響するのかなと思います。」
高知への想いを大切に。
株式会社やまとごころ地域共創部として高知で事業を開始した当初から、2022年の株式会社とさごころ設立、そして現在まで。一貫して大切にしている価値観です。
[1] 「宿泊旅行統計調査」(観光庁)より。2023年の延べ宿泊者数を、コロナ禍前の2019年と比較したもの。
<まとめ>
今回は、高知県で設立された「株式会社とさごころ」の代表取締役 中澤さんにお話を伺いました。創業間もない会社ですが、高知県内でインバウンドに関する専門性の高いサービスを提供する貴重な存在となっています。同業他社が高知県内にいないことも重要ですが、それ以上に高知への思いを持って取り組んでいることが、現在の事業展開や発展に繋がっていることを感じました。
株式会社とさごころ
高知県高知市新本町二丁目16番5号
TEL:088-821-8807
https://tosagokoro.jp