バンガローがサテライトオフィスに!高知への進出で重視する点【ミトネデザイン】
高知県の山間部にある馬路村、村の面積の96%が森林で住民は800名程の小さな村。ゆずの村としても全国的に有名で、オフィスの近くには温泉施設やゆずの加工工場などがあり、観光にもおすすめのスポットです。
そんな馬路村にオフィスを構える株式会社ユニオンネットの、丸山享伸社長に、2022年春に設立されたばかりの高知オフィス「ミトネデザイン」についてお話を伺いました。
企業概要と高知オフィス
Q:御社の企業概要と高知オフィスについてお聞かせください。
A:株式会社ユニオンネットは、関西を中心とする中小企業様をはじめ、教育業界やBtoB領域にWebマーケティングを提案するWeb制作会社です。
ミトネデザインは大阪の一部の業務を抜き取ったサテライトオフィスとしての位置づけではなく、パンフレット制作やポスターのデザインなど、地域のブランドづくりを推進していくお手伝いをしています。役割としては、本社に依存しない独立した組織を目指しています。
「都心の会社が地方へ進出」の場合、地方では作業だけを行い、営業力や決定権を持てないことが多いように感じています。これだと本社への依存が強く、極端な話、本社の売上が下がってくると拠点閉鎖になってしまうと思うのです。
ミトネデザインでは、あくまで地方拠点で決定権を持つためにも本社からの下請け仕事などは行わず、自力で集客・営業を行えるチームづくりを目指しています。
Q:具体的な制作物などはどういったものがありますか?
A:ユニオンネット本社ではBtoBや教育業界のWebサイトの制作がメインになります。一方、ミトネデザインではチラシなどのグラフィック制作を中心に、例えば、洋菓子屋さんや組合さんの地域イベントのポスターなどを制作しています。
もし、“先代のやり方をもっとこう出来たらいいのにな”と思っている人たちがいたら、ぜひ一緒にリブランディングのお手伝いができればと思っています。
Q:高知オフィスについて、お勧めのポイントを教えてください。
A:見てもらうと分かりますが、全部です。「どこ」と切り取ることもなく、全てです。オフィスの空間も、そこから見える景色も、そこで働く人も、地域の住民も、です。
地方進出の理由と高知県を選んだ決め手
Q:地方進出の経緯や、高知県を選んだ決め手についてお聞かせください。
A:高知との繋がりで言うと、大阪で働いていたスタッフが魚梁瀬地区の出身で、馬路村のWebサイトのリニューアルをして欲しいと、そのスタッフを通して仕事の依頼がありました。
当時は制作会社とクライアントという通常の関係でした。そこから村の方からサテライトオフィスのお話がありました。村へ足を運び、空き家や古民家を見学する中でバンガローが候補にあがり、全国的にも珍しいバンガローオフィスに魅力を感じ、開設に至りました。
Q:他の県での設立は検討されませんでしたか?
A:地方での古民家などを使ったサテライトオフィスであれば、高知ではなく関西でもできると思っていました。そこで、村長からご提案いただいた、バンガローのサテライトオフィスが面白いと感じたこと、魚梁瀬地区出身のスタッフの地域愛の強さや、実際に来てみても自然豊かでいいところだと感じたこと、様々な理由で、ここの設立を決めました。
地方進出の懸念点と解消法
Q:高知県への進出に際して、心配だったことや苦労したことはありますか?
A:苦労した点で言えば、コロナが大変な時期だったということもありますが、行政と補助金の話がなかなか進まなかったことでしょうか。
バンガローの利用にあたり、宿泊施設からオフィス施設への改修が必要ということで補助金の話を県・村とで進めることになりました。補助金の話が進まないことにはオフィス開設も進みません。開設時期が決められないため、移住や転職による従業員の確保が難しかったのは大いにあります。
ただ、補助金に関しては、いただけて、とてもありがたかったです。オフィスのソファーや備品などほとんど、いただいた補助金で購入ができ、開設のための初期費用がかなり抑えられました。
Q:「人材確保」「人材育成」について、それぞれ現状課題に感じていることや、工夫していることなどを教えてください。
A:あまり積極的に採用を行っていないのですが、人材確保で言えば「この地域を好きな人を採用したい」と考えています。
弊社に限った話かもしれませんが、一般的にサテライトオフィスといえば、リモートワークをイメージされる方も多いと思います。そんな中、弊社では「出社」や「対面でのコミュニケーション」を非常に重視しています。
そのため、「地方で自由に働く」よりも「地方で挑戦したい」というスタートアップな雰囲気はあるかと思います。
Q:初期の人材確保で苦労することはありませんでしたか?
A:募集は東京・名古屋・京都・大阪・福岡…と、広域に行ったので、応募総数はかなり多かったです。単純にデザイン業界で働きたいという方やアウトドアが好きな方も多かったのですが、それよりも馬路村が好きという方と働きたいと思っていたので、お断りすることが多かったです。
スキル面も大切ですが、スタッフ同士の相性を一番に考えて採用を進めました。今後も、好きな人と好きなことができる場所にしていきたいと思っています。
Q:作業効率など、都会との違いを感じますか?
A:作業環境としては抜群に良く、かなり集中して仕事ができています。逆に集中しすぎてしまうくらいです。
窓を開けて自然の音を聞きながら作業すると、作業効率がとても上がっていると実感できています。この非日常を日常にしてはいけないと、日々スタッフと話しています。
今後の目標
Q:今後の高知オフィスの展望についてお聞かせ下さい。
A:地方で意思決定をし、モノづくりをしていく、ある意味「創造の場」になると面白いなと思います。そしてマイペースに少しずつ認知を拡げていって、地方の仕事もしながら、全国の仕事もやっていきたいなと思います。
余裕ができたら、馬路村を撮ったポストカードを作ったり、宿泊の記念に家族写真を撮ってあげるとか、この地域に関する事はやってみたいなと思います。
実際、高知に拠点を開設し、数ヶ月経過しましたが「地方には良い会社が多い」と感じることが多く、いろんなコトやモノにもっとデザイン的な要素を取り入れていきたいです。
Q:社員にとってどういった会社にしていきたいですか?
A:例えばデザイナーのキャリアで言うと20代でいろんな経験をして、30代になると自分ができることを伸ばしていきたいとなる時期だと思うのですが、自分のやりたいことができる会社に行くことはガチャ要素が高かったり、自分にチャンスがなかなか巡ってこない可能性もあります。
デザイナーからすると自分のポートフォリオに「自分が納得できるデザイン事例」を陳列するのが使命だと思うのですが、地方であれば案外それができるチャレンジングな場所だと思います。
本社の下請けではなく、高知の拠点で意思決定権をもち、スタッフ一人ひとりが経営者になれるくらいになればいいなと思っています。
Q:地方への進出を検討している企業に向けてメッセージをお願いします。
A:何を持って進出するかは様々ですが、私の場合はクリエイターの「創造の場」をメインに考えています。
地方への進出には企業で考えるとコストカットの役割が大きく、そこで働く人たちのキャリアにはあまり目が向けられていないようにも感じます。待遇面での地方格差を埋めるには、地方で優秀なものを生み出すしかないと考えています。
地方で人材を雇ってコストカットを目的にする企業もあると思うのですが、この先何があるか分からない時代では、地方の拠点で働く人材を育てていかないと厳しいと思います。
また、最近では都市部の企業が地方のデザイン会社に制作依頼することも多くなっているので、地方においても仕事のチャンスは広がっていると思います。
まとめ
企業誘致に取り組む高知県への進出について、理由やメリット、今後の課題などをミトネデザイン様に伺いました。
高知県内へ進出し、クリエイターの「創造の場」として選んだのはバンガロー。本社に依存しない独立した組織づくりを目指されています。
ミトネデザイン様、ありがとうございました!
<企業情報>
ミトネデザイン
(2023年2月6日 投稿)
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