年齢も立場も超えて、いろんな人が交わる場所【Kochi Startup BASE】
Kochi Startup BASE(以下、KSB)は、一般社団法人ハンズオンとエイチタス株式会社が共同で運営するスタートアップ支援施設です。スタートアップ支援を目的とした高知では初めての施設として2018年に設立せれました(2023年からは高知市中心部に移転)。スタートアップ支援のほか、学生から社会人まで使えるコ・ワーキングスペースやシェアオフィス、レンタルスペースの運営も行なっており、年齢や立場、バックグラウンドが様々な人たちが利用しています。
今回は、一般社団法人ハンズオン代表の野崎浩平さんにKSBの取り組みや見据える未来についてお話を伺いました。
理科の教員をしながら、Kochi Startup BASEに参画
長く暮らした神奈川県横浜市から、2013年に高知市に移り住んだ野崎さん。理科の教員として働く傍ら、高知県で開催されるイベントや勉強会に参加したり、あるときは自分でイベントを主催したりしながら、学校外の社会や人との繋がりを深めていきました。2022年には一般社団法人ハンズオンを立ち上げ、教員として教壇に立ちながら教育相談やコワーキングスペース、シェアオフィスの運営を行っています。
野崎さん:学校において、徐々に開かれた教育・学校現場が求められる時勢の流れができてきていましたが、そこである課題に直面しました。「あれ?高知ではそれをできる場所や環境がないぞ…」と。探究活動をする中で、学校外でもワイワイと仲間と話しながら取り組める環境が必要ですが、静寂を求められる図書館ではそれが難しいですし、カフェも少し違う。私自身も学校外で仕事をしたり、企画を考えたりする場所がないなという悩みを持っていました。高知ではそうした環境というのはほとんど無かったのだと思います。
そこで、親交のあったエイチタス(元々のKSB運営母体)の代表と話をする中で、KSBの高知市中心部への移転に合わせ、コワーキングスペースやシェアオフィス、レンタルスペースとして地域内・外の人に貸し出すことで人の交流を生み出す場所として、さらなる進化を目指すという方向性が決まっていきました。
KSBの利用者は社会人だけでなく、高校生や大学生といった学生も含まれます。シェアオフィスで仕事をする人もいれば、その隣で課題に取り組む学生もいる。バックグラウンドや立場、年齢が異なる、さまざまな人がKSBという場所で出会い、新しい交流が生まれる環境が整いました。
Kochi Startup BASEが目指す、高知らしい場づくり
野崎さんが高知に移住して驚いたことの一つに、人と繋がるスピードの速さがありました。この人に会いたいと思ったら、知人の紹介や直接のアクションですぐに会うことができてしまうのが高知。会社の社長や興味深い活動をしている人、はたまた政治家など。役職や立場に限らず、様々な人と出会い、話すことができる。そのハードルが極めて低いのが高知の特徴と言えます。
野崎さん:いろいろな場所に顔を出していると「あの人は◯◯の社長さんだよ」という話から、「紹介するよ」という風にすんなりと人と繋がれることがあります。高知では、それはとても自然なことで、人との繋がりを大切にしていることが高知の面白さだなと感じています。都会では、「勤めている会社の社長の顔を知らない」、「社長の顔は知っていても、直接会ったことはない」ということも珍しくないかもしれません。高知ではそんなことはなくて、顔が見える距離感、顔が見える街だなと思います。
野崎さんがこのように感じているのには、高知という経済の規模感や人との繋がりや関わりを大切にする県民性が影響しているのかもしれません。例えば、高知を代表する観光地、グルメスポットの「ひろめ市場」では、たまたま相席になった観光客に地元住民が話しかけ、お酒を奢ったりすることがよくあります。また、地元住民がひろめ市場でお酒を飲みながら、真面目に仕事の話をするなんてこともしばしば。こうした県民性や文化を学生にも感じて欲しいと野崎さんは言います。
野崎さん:お酒の提供される「ひろめ市場」を積極的に高校生に薦めることは難しく、それならばお酒抜きで仕事の話や企画の話などができれば、面白いのではないかという考えから、KSBのシェアオフィス、コワーキングスペースの企画が生まれています。高知のおせっかい、人との繋がりを大切にする県民性が学生にも感じられる場づくりができれば面白いですね。学生には、自分のアクション次第でいろんな人に会える・繋がれる環境にいるということに気づき、行動に移してもらいたい。そんな場所が構えられればという思いで取り組んでいます。
KSBはただの貸しスペースではなく、何かが始まるきっかけを作る場所
KSBはただのシェアオフィスやコワーキングスペース、レンタルスペースではありません。人との繋がりや関わりを作る、そのきっかけとなる場です。
高知県内企業に勤める人やフリーランスの方の利用はもちろん、県外から高知に来ている企業とも繋がれる場所として仕掛けをしていきたいと考えていると言います。
野崎さん:東京の企業から、KSBを利用して高知で小さくイベントのテストをしたいという話をいただいています。仕掛けをしやすいのが地方の強みであり、また先述した通り、高知は人と繋がるスピードが驚くほど速く、その深さも深いです。「こんな人いない?」と誰かに相談すれば、すぐに繋がれるということはビジネスをする上ではメリットと感じています。私自身、ひょんなことから高知で入浴剤を作っている会社さんと知り合い、そのことがきっかけで理科の実験で作っていた入浴剤を商品化し、販売するところまで学生に体験させてあげることができました。出会いから実行まで、力を合わせてパッとできてしまうところが高知の大きな魅力ですね。
KSBはシェアスペースでありながら、ラボのような実験的な取り組みをできる場所でもあります。少しずつ広まっているその輪が、子どもたちの想像力や行動力、そして未来を描く場所として育っています。
<まとめ>
KSBという、多面的な要素を持つ「場」を運営する野崎さんにインタビューさせていただきました。高知ではまだまだ珍しいスタートアップ支援、コワーキングスペース、シェアオフィスなどのサービスを提供する施設ですが、そこで生まれる偶発的な出会いや学び、きっかけなどがこの場所の大きな魅力と感じました。
Kochi Startup BASE
住所:高知県高知市はりまや町1丁目2-12-1階
営業時間:9:00〜21:00
https://startup-base.jp